About Radiation Exposure
患者説明の前の心構え
患者さまから被ばく線量やその影響について具体的な説明を求められた時に、次の3つの事項を実践すべきである。
1.患者さまの話をよく聞くこと
患者さまの不安の原因、疑問点などの話をよく聞いてあげること。そして患者の知識・理解能力などを把握し、説明内容を決定する。
2.放射線診療は、病気の診断・治療に必要であることの説明
患者さまの多くは、自分の受けたX線検査のメリットについてあまり考えず、放射線被ばくによる影響のことばかり心配する傾向がある。X線検査は、患者さまの病気の診断・治療にとって必要であることを十分に説明し、納得させることが重要である。
3.放射線利用の「正当化」・「最適化」・「線量限度」を実践していることの説明
放射線利用における防護対策の3原則「行為の正当化」・「防護の最適化」・「個人の線量限度」については、確実に実践する必要がある。
1)行為の正当化
放射線診断・治療における放射線使用は、医師・歯科医師にゆだねられている。放射線被ばくを伴う行為は、正味のプラスの便益を生むものでなければ採用してはならない。したがって、放射線利用による利益とそれに伴う放射線障害の比率を考え、さらに放射線被ばくを伴わない検査法の利益とリスクも考慮に入れることが必要である。
2)防護の最適化
確定的影響の発生を防止し、できうる限り低く保たなければならない。(比確率的影響、1977勧告)画像診断に有益な情報が得られる範囲でできるだけ少ない線量でX線検査を行うことである。放射線診療機器の改良、再撮影の防止、透視時間の短縮、照射野の絞りなど最適化を実践するために診療放射線技師は、常に努力しなければならない。
3)個人の線量限度
線量限度については、現在のところ放射線診療に関して法律上の制限はない。しかし、確率的影響の発生確率を容認できるレベルに制限し、一定限度を超えてはならない。
放射線 Q&Aについて
Q-1【何回も撮影したけど身体に影響はないのですか】
通常のX線検査を何回受けても特に問題ありません。検査で用いる放射線の影響はほとんどなく、検査から得られる情報が大きく安全です。また一般のX線撮影で用いる1回の放射線量は、1年間に自然から受ける放射線(2.4mSv)と比べても少なく、身体的影響が現れる事はありません。
Q-2【短期間にいろいろなX腺検査をしましたが影響が心配です】
一般的なX線検査では身体的影響の発生が問題になる事はありません。検査から得られる情報の方が大きく安全です。X線検査で障害が発生する放射線量を受ける事は、通常の検査法ではありません。単純撮影、CT検査、消化管検査等の複数の検査を受けても限定した部分の撮影であり、障害を心配する放射線を超える事はありません。
Q-3【子供の撮影を介助した後、妊娠がわかり胎児への影響が心配】
妊娠初期(0〜8週)の胎児は放射線による影響の発生レベルが100mGy/回、また胎児(8〜15週)の場合は120mGy/回ですが、小児の撮影における皮膚の放射線量は低い値です。また介助者は直接X線を受けることはなく、患者様からの散乱腺もほぼゼロに近い量となり、さらにX線防護衣により胎児が放射線を受ける事もなく影響は心配ありません。また妊娠中の方で生殖腺から離れた部位のX線検査を受けた場合も影響を心配することはないので安心してください。
Q-4【交通事故に遭い骨盤と頭部のX線検査を受けたが、妊娠がわかり影響が心配です】
骨盤正面撮影、頭部3方向撮影の入射表面推定線量はそれぞれ2.5mGy、6.5mGy、また生殖腺の線量は骨盤正面撮影で約1mGy、頭部3方向撮影では、ほぼゼロになります。これは胎児への影響の発生を考慮しなければいけない100mGy/回よりも非常に低い量なので胎児への影響は心配ありません。受傷部の状態を知るための適切な検査ですので安心して下さい。
Q-5【胸部X線撮影を受けたが、施設によって腰プロテクターを使ってくれないのはなぜですか、放射線の影響が心配です】
胸部正面撮影での皮膚の放射線量は、自然放射線の1/17以下で0.14mGy程度であり、X線を受けない生殖腺の線量はほぼゼロと低い量ですので放射線による影響は心配ありません。プロテクターの使用の有無に特に影響の差はなく、使用法の規定が無い事が施設間での違いを生じております。(注:日放技は使用しないと勧告)
Q-6【胸部撮影において鉛プロテクタ防護の必要はあるのでしょうか】
一般の胸部撮影の入射表面線量は約0.14mGyで、生殖腺の位置での被ばく線量はその1/50から1/100となります。したがって、照射野絞りを適正にすれば生殖腺防護のプロテクタは必要ありません。
Q-7【子供が新生児期に頭部CTを受けたが将来放射線の影響がでる事はないのですか】
頭部CTで使用される放射線量は一般撮影に比べ多いのですが、影響において重要なのは、どの臓器にどの程度放射線を受けたのが問題となります。考えられる身体的影響として甲状腺に対する発ガンですが、甲状腺は約1.9mGyの放射線量を受けますが、これは自然放射線量と同程度です。また赤色骨髄は約2.7mGyの放射線量を受けますが50〜200mGy以下の線量では白血病の発生確率には影響しないとわかっています。遺伝的影響に対しては、生殖腺に放射線を受けた場合のみ発生しますが、頭部CT検査の場合受ける線量は、ほぼゼロなので影響は全く心配ありません。
Q-8【病室でのX線撮影時の際、なぜ退室しなければならないのですか、隣の患者は安全ですか放射線の影響が心配です】
成人の胸部ポータブル撮影で皮膚に照射される放射線量はおよそ0.19mGyで2m離れると10μGy以下になりますので隣のベッドに患者様がいても問題ありません。しかし撮影の際、退室していただくのは、不要な放射線を少しでも受けることがないような配慮と患者様のプライバシー保護のためになります。
Q-9【放射線は有害と聞きました。胸部集団検診を毎年受けていますが、大丈夫でしょうか】
1回の胸部撮影での入射表面線量は0.2mGyです。放射線による人体への影響には確定的影響と確率的影響がありますが、この程度の被ばく線量ではいずれもなんらかの影響が現れることはないので、安心して検査を受けてください。
Q-10【X線写真は1回に何枚まで撮影しても大丈夫ですか】
1回のX線検査で撮影する枚数制限は特にありません。撮影部位や症状によって医師が判断した必要最小限の枚数分だけ撮影されます。現在のX線検査は以前より1回に受ける放射線量もかなり少なくなっているため、枚数の心配をせず安心して検査を受けてください。
Q-11【放射線を受けると白血病やガンになりやすいと聞きますが本当でしょうか】
白血病の発生は造血臓器である赤色骨髄が被ばくしなければまったく心配ありません。通常のX線検査では、白血病になる可能性はほとんどないと考えてよいでしょう。ガンについても、大量の放射線を受けるとガンになる確率が高くなりますが診断で用いられる線量では心配ありません。
Q-12【妊娠中にX線検査を受けた場合の危険(リスク)について教えてください】
胎児への影響は、胎児が直接X線を受けた場合のみ問題となります。胎児のリスクは胎児死亡(流産)、奇形児の発生、精神発達の遅延、小児ガンの発生、出生児の遺伝的影響などがありますが、被ばく線量と胎児の月齢によっても影響は異なります。胎児の確定的影響のしきい値は約100mGyといわれています。
Q-13【生殖腺に放射線を受けると子どもができなくなるのですか】
少しでも被ばくしたら不妊になる可能性があるのではなく、一定の線量以上被ばくしないと不妊にはなりません。一時的不妊や永久不妊になる線量をしきい線量といい、それぞれ一時的不妊では、男性で150mGy、女性で650mGy、永久不妊では、男性3.5〜6Gy、女性で2.5〜6Gyです。これを超えて被ばくしない限り一時的にも不妊になることはありません。なお、これは生殖腺が被ばくした場合だけで、他の部位では不妊にはなりません。
Q-14【放射線を被ばくすると子どもに影響が残るのでしょうか】
本人の被ばくがその子孫に与える影響を遺伝的影響といいます。遺伝的影響が起こる可能性があるのは生殖腺が被ばくした場合で、男性、女性ともに生殖腺に被ばくしない限り遺伝的影響を心配する必要はありません。実際、人間では遺伝的影響はみられたという実例はありません。
Q-15【X線検査室の周りには、放射線が漏れていませんか】
X線検査室の周りは管理区域と呼ばれ、3ヶ月間で1.3mSv以下になるように管理されています。この値は、3ヶ月間検査室の壁際でじっとしていても、胸部の写真を正面・側面の2枚撮った程度の被ばく量であります。また、これは規制値なので、実際はもっと少なくなるよう設計されています。